こんにちは、アガリスクエンターテイメント『その企画、共謀につき』の公開稽古記録係の中村です。
今回は初めてお客様の前で総てが演じられた「試演会」の様子、、というよりも、その後に共謀者、出演者入り乱れて行われた「作戦会議」の様子を中心にお伝えいたします。
〜前回までのあらすじ〜
アガリスクエンターテイメント(以下、アガリスク)の最新公演『その企画、共謀につき』(以下、『共謀につき』)は、脚本・演出の冨坂友が思いついた企画を、ディテールを詰めたり、決定したりする段階から共謀者(共謀券を買ったお客様や、稽古記録、台本の進行状況をオンラインでチェックしているお客様など)たちに赤裸々に公開していく、ガチンコな企画公演である…。
第二回の公開稽古により、冨坂によって提出された企画の中から、『そして怒濤の伏線回収』(以下、『伏線回収』)に公演が決定した。
脚本制作状況すら、電波を通して全世界に公開しつつ、脚本、稽古、共に本番に向けて進行していった。しかし、前回の公開稽古時点では、まだ伏線は一つも回収されていなかった。
ついに本番まで、1週間余り…。伏線は回収できるのか?怒濤に回収できるのか?というか、そもそも完成するのか?
脚本・演出・出演・スタッフ・共謀者、それぞれの立場でそれぞれの期待と不安を背負った中、試演会が始まった…。
会場で配られた冨坂さんからの言葉に「試演会案件って単語がありまして、実際に試してみないとわからないけど、とりあえずやってしまえ!というアイディアの数々です」とありました。
試演会には本当に多くのお客様が来場していて、それを見ながら、自分は「正直、本番前に見ても、ネタバレじゃないのか?」なんて事を思っていたのですが、この言葉を読んで、ああそうか、ここでしか無いアイディアがあったり、ここからまた生まれるアイディアがあったり、と本番にも増して”一度きり”な状況がこれから起きるのか…、とようやく理解しました。
実際に行われた試演会は、まさに”一度きり”の状況だったと思います。
稽古で公開されていた部分も少しずつ変わっていたり、脚本で読んだ時より実演した時の方が面白さが勝ったり、逆に、いまいち理解できなかったネタもあったり、飛んでしまったセリフが実際の会議をしているようなリアルさに見えたり、と多くのことが起こっては消えていきました。
19:00ちょうどに始まって、20:50まで。1時間50分ぎっしりの試演会が終わって、少しの休憩が挟まった後、
作演出の冨坂さん、役者のみなさん、そして、試演会を見たお客様による、「作戦会議」が始まりました。
◯「怒濤」の量的問題
まず、役者陣の感想を確認すると、
「難しい」「凹んでる」「お客さんの笑い声があってよかった」「緊張した」「緊張しすぎて手が震えた」「緊張しすぎて胃が痛かった」「本当に疲れた」「楽しかった」など、概ね疲労を訴える言葉が多く、
「後半〜終盤の「怒濤の伏線回収」部分(以下、「怒濤」)が、通常の三倍くらいの密度があるので、テンションを維持しつつ、役者の体力を保つための方法が必要だ」という課題が出ました。
しかし、それに対して、
冨坂→でも、「怒濤」はもっと伸ばしていきたいんだよね。
という衝撃の発言があり、作者としてやりたい事を提示しました。
具体的には
・台本の存在が見えるようにしたい(舞台上に実際の台本が見えるようになり、登場人物たちが台本の存在を認識する?)
・「怒濤」部分はより能動的に回収していきたい。(今は、全員の要素を回収しないと終われないという義務感が勝っている。)
ということでした。
この提案が提示された際に、「じゃあ、実際に伏線回収するところって、お客さん的に長すぎないのか?」ということを確認したいということで、お客様、出演者合わせての多数決が行われました。
Q:現在の『伏線回収』の後半部「怒濤の回収」(仮)の長さについてどのように感じたか?
「会議参加者(出演者・観客)による投票結果」
出演者 | 観客 | |
⑴もっと長くするべき | 5名 | 11名 |
⑵もっと短くするべき | 1名 | 5名 |
⑶適切な長さである | 4名 | 12名 |
⑷棄権 | 1名 | ?名 |
よって、長さについては、基本的に「適切」か「長くするべき」の意見が多いという結果でした。
しかし、この問題(長すぎて、飽きてしまわないのか?)は、どちらかというと、伏線の回収の方法や要素を増やすことで、質を変えていくことこそが重要なのではないか、という流れになりました。
◯「怒濤」の質的問題⑴〜見せ方〜
では、「怒濤」の質の変化について、見せ方の点において、
冨坂さんから試演会では実施できなかったテクニカルな演出の予定を話しました。
冨坂→照明、音、がもっと変わっていく。芝居中で極力音楽を使ってないんですが、「怒濤」にとっておくつもり。
そうやって、「怒濤」では、照明や音ごとに見せ方そのものが変わっていくことになるんじゃないか。また、空間設計もこの点で活かされるはず。
これはこの場ではどう実現するか/できるか、がわからない為、ひとまず次に進むことになりました。
◯「怒濤」の質的問題⑵〜未回収伏線列挙〜
今回の脚本は「試演会」の為に完成させたものであるため、まだ回収しきれていない伏線があるはずだ、ということで、その場にいた全員が思いついた「未回収の伏線」をあげていくことになりました。
しかし、この伏線列挙は、当初は「ああ、確かにこれは回収されていない要素だな」と思われるものがあげられていったのですが、
後半になると、伏線候補になるものが劇中に登場したほぼ全てのもの・こと、となっていき、更に試演会に来るまでに稽古で消えていった「裏設定」もどんどん墓から起こしていき、劇中をはるかに上回る狂った「伏線ジャンキー」に、全体がなっていきました。
例えば、
淺越→自分が冒頭から(人物紹介の一つとして)なんとなく本を読んでいるんだけれど、この本については回収しなくていいのかな?
鹿島→あ、じゃあ、そうなると、冒頭で私が配ったお茶も、なんにも回収されてない!
高木→自分もバッグが特徴的だけど、なんにも回収されなかったな。
と連鎖する流れがあったのですが、そこに対して、誰も「いやいやいや」とは言わずに、うんうん、と頷いている…。
場が完全に「伏線」によって動いている/動かされているという謎の空間が立ち上がり、伏線を求めるから、伏線が生まれていくサイクルが回っていく…、その果てに、以下のリストが出来上がりました。
※まだ回収していない伏線(予定)の列挙なので、基本的には見てもネタバレにはならないと思いますが、一ミリもネタバレに触れたくない、という方は以下、覗かないことをおすすめします。
<未回収伏線(候補)リスト>
・夜市の人形
・じゃじゃまる
・笠原が読んでいる本
・配られたお茶
・関のバッグ
・巣鴨円頓寺
・ファンタスティックアーケード
・ホテルサンパレス
・あきるのフロンティア
・鋼の錬金術師
・コミックBRAVE
・マスコットキャラのモデル
・漫画の内容
・小川家の継承問題
・不倫および離婚問題
・誰が既婚で誰が既婚じゃないのか問題
・牟田→海外で活躍していた設定
・吉岡→よく泣く設定・帰国子女設定
・関→やばい過去がある設定・東南アジア人のモデルと結婚した設定
・町バルとマリアージュ
・野伏せり
・アルフィー
・ピカチュウ
・ビートルズ
・鈴木さん
…いや、なんなんだこれは。と言いたくなるリストです。
15分程度の話し合いの中で、20を遥かに超える伏線が列挙されていき、その集積が上のようになりました。
この伏線一つ一つについて解説していくことは、完全なネタバレになる、かつ、文量がとてつもなくなる、為に控えますが、
一つ一つの伏線をあげていく中で、印象的だったのは、
「あ、それは考えていたんだけど、湿っぽくなるのでやめました」
「それをやるとくどくなるんですよね」
という発言が幾度もされていたことでした。
とにかく、今回の公演では、湿っぽくすることを避けて、ハイテンポでひたすら笑わせていく、ということなのだと思います。
また、劇中の冗談の会話に組み込まれていた「野伏せり」(「七人の侍」などで敵となる、職を失った野武士のこと)というワードが、冨坂さんに引っかかったようで、
「野伏せりは絶対に使います!」とその場で宣言していました。
商店街に野伏せりがどう関わってくるかはわかりませんが、公演後も、野伏せり野伏せりと繰り返し言っていたので、おそらく使われると思います。
また、この洗い出しにより、余計はっきりしたのですが、本来の伏線とは「後々に意味がうまく作用していく為にあるもの」ですが、今回は「伏線を回収する」=「勝手に意味を読み取る乱暴さ」が連続していく、ことによって、伏線自体に「あんまり意味がなくなっていく」ものになっていく、という感じがありました。じゃあ、その先に一体何があるのでしょう?
こうして、劇中よりも重度の「伏線回収病」にかかり、謎の熱に浮かされたまま会議は終了しました。
とはいえ、これらの伏線を回収するかはすべては冨坂さんが選ぶことであり、実際に淺越さんからも「ここまで言って全部ポイする可能性はありますからね、こいつは!」と断りがありました。
より「怒濤」にするにはどうするのか?残った伏線を回収するのか?「野伏せり」も?
など、それらの疑問を解消する為にも、ぜひおよそ1週間後の本番、
『そして怒濤の伏線回収』9/15(金)〜9/24(日)@新宿シアター・ミラクル
をご覧ください。
予約はこちらからできます → http://24th.agarisk.com/ticket
以上で、公開稽古報告を終了します。これまで長い文章をお読みいただきありがとうございました。若輩者ですが、少しでも稽古の様子が伝わり、共謀の手助けになったなら幸いです。
この先の報告は、皆様自身が、各種SNS(ハッシュタグ#その企画共謀につき)・ブログ・アンケートなどで!お願いいたします!!