『その企画、共謀につき』公開稽古報告〜現場から異常です〜公開稽古①前半

こんにちは、今回、アガリスクエンターテイメント『その企画、共謀につき」の公開稽古記録係その1を担当する中村です。

まず、この公演の概要についておさらいします。
『その企画、共謀につき』(以下、『共謀につき』)は、企画会議や稽古のいくつかを公開形式で行い、劇団と共謀者(共謀券・無限共謀券を購入し、公開稽古に参加するお客様)を中心に作り上げていく公演です。
現時点では、公演内容も未決定で素案がいくつかあるのみ。当然台本も0文字。全てが流動的で、動かないのは公演の日程のみ…。という、良い意味で言うとチャレンジングな企画です。

この記録は、『共謀につき』において、重要な位置にある「公開稽古」の中身を、共謀券を買っていないお客様やまだお客様ではない方に少しでも知ってもらいたい(そして、出来れば次の稽古に来て共謀してもらいたい、もしくはこの先にある公演に来てもらいたい)という目的で書くことになりました。
私の立場を示しておくと、
「アガリスクエンターテイメント(以下、アガリスク)の演劇は動画で数度見たくらい」
「アガリスクの劇団員さんと会ったことがない」
「公開稽古1日目の前日に依頼が来た為、大幅に戸惑っている」というものです。
色眼鏡なしに、素直に起きたことを伝えられると思います。

それでは、7月4日、都内某所にて行われた会議の様子をお伝えいたします。
(なお、先日掲載された「創作日誌」内「公開稽古①」→http://24th.agarisk.com/report/0705/378やTwitterにて「#この企画共謀につき」のTLを一緒に読んでいただけると、より詳細に伝わると思います。)


19:00からの会議開始を前に、共謀者の皆さんが続々と入場していきます。
会議の形は、キャスト・スタッフがコの字型で顔を突き合わせ、それを共謀者が囲むというものです。これは過去公演『ナイゲン』と同じ形をとっています。

キャストやスタッフは和気藹々と話し(千葉ロッテマリーンズの話や、ジャングルクルーズの話をしていました)、お客さん達はこれから起こる会議にやや期待と緊張を持ちながら取り囲む(中には10年前の公演から見ているというお客さんもいました)という、不思議な空間が出来上がりつつある中、19:00になり、厳かに会議が始まりました。

キャストやスタッフによる自己紹介が終わると、作・演出である冨坂さんから、今回の企画説明が改めて行われました。

今回は共謀して何かを決めていく、という外枠自体を企画にしたこと。
なんでこんなことをやろうと思ったかというと、
・最近、アガリスクは再演が多くなり、代表作のバージョンアップが増えてきたので、そろそろ新作が書きたい。
しかし、次第に代表作を超える為のハードルが高くなり、「何を書けばウケるか」という自意識が回り始めていて、それは良くない。
よって、自分以外の意見が介入する、実験できるような場を作ろうと思った。
・「物語」よりも、「企画性」だったり、自分たちが何を考えているかという「思想」を中心に出来るものを作りたいと思った。
という理由があったということ。

そして、この企画を実行したため、公演二ヶ月半前にして、演目が決まっていない、という切迫した現状になっている事も話されました。
公演を行う為には、宣伝美術や舞台美術、衣装の製作・発注など様々な準備が伴います。また、公演内容が決まっていない劇に人を呼ぶのは難しいはずです。会議中ではこれより遅れるとどのような問題が起きるのか、具体的な金額も口にされ、よりガチンコな状態が作り上げられていきました。

そして、ここからがこの会議の本題。「公演企画の検討」に突入していきました。
現状、冨坂さんが考えた案は3つあります。以下に、それぞれの概要とそれぞれを作ろうとした理由も併記します。

①『友達が死んだ(仮)』…亡くなった友人の部屋の片付けをきっかけに、問題が起こっていく。
【企画理由】
ものを動かすことによって進む話を書きたかった。また、会場の新宿シアターミラクルの使い方は3方向で囲む『ナイゲン』方式が最もうまくいくと考えた。その二つを合わせた結果、とある部屋の引越しを眺めるという内容が良いのではないか、と考えた。
【懸念】
この設定で始めると、どうしても湿っぽい「お話」になっていく。それは近作の印象と被るし、企画理由に書いた「物語」より「企画性」や「思想」という部分とずれていく。また、死んだ人について一つの部屋で話すコメディだと『キサラギ』などの先例がある。

②『信玄が死んだ(仮)』…「信玄が死んでしまった」事を隠そうと話し合う武田家と、そこにやってきてしまった上杉家の一騒動。
【企画理由】
アガリスクがこれまでやってきたことに、「嘘をついて誤魔化そうとする人がいっぱい出てくる」ということと「会議をする」ということがあり、それを合体させたいと思っていた。戦国時代、武田信玄が死んでしまった後の武田家が信玄の死を隠蔽しようとしたことを知り、この設定ならば、二つを合わせて何かを作る事が可能だと思った。
【懸念】
作る上で、リアルな戦国武将を作りあげることは難しいので、デフォルメは必須。
また、女性キャスト(今回出演者構成は男性:女性=7人:5人)の扱いが難しい。

③『パズルとか伏線とか(仮)』…パズルのように最後に辻褄があったり、伏線を見事に回収したりするような演劇が本当に面白いかを疑ってみて、面白さを新たに発見できるような、実験的内容。
【企画理由】
もともと冨坂自身がパズル的・伏線が見事と呼ばれる物語が好きであるが、一方で「見事に組み立てられているけれど面白いかはよくわからない」と思う事が増えてきた。
また、アガリスクの演劇が好きな人にはリアル脱出ゲームなども好きな人が多く、パズル的なものを取り扱う趣向に対して食いつきが大きい可能性がある。
よって、これらのテーマを、過去作の『七人の語らい/ワイフ・ゴーズ・オン』のように、メタフィクション的に取り扱うことで、今問題に思っていることとニーズが合致するのではないか。
【懸念】
まだ何も決まっていないに等しい。

これらの説明を受け、事前に提示されたキャスト・スタッフの意見を基に、それぞれの見解が改めて発言されました。(事前に集められた意見はこのページで見る事ができます。
(劇団員編)http://24th.agarisk.com/report/0621/296
(客演編)http://24th.agarisk.com/report/0626/345


キャストやスタッフ、それぞれの立場からの意見を確認しました。(劇団員はキャストだけでなく、衣装や舞台美術などの兼任した仕事がある為、その立場からも意見が出ました。)

全てを列記することは出来ませんが、主な意見を中心にまとめると、

①『友達が死んだ(仮)』に関しての指摘
・過去公演『無縁バター』と被る部分が多い。(それを良く思うか、悪く思うかはそれぞれ異なる。) 【発言者】浅越・甲田・沈
・湿っぽいのをやりたくない、ならば不適切ではないか。 【発言者】浅越・熊谷

②『信玄が死んだ(仮)』に関しての指摘
・時代劇は大変だと思っていたが、具象ではないなら、面白みがある。【発言者】熊谷・沈
・衣装や音楽などについて、やりがいがある。 【発言者】熊谷・三濱(音楽)
・劇団以外の立場として、アガリスクが時代劇をやると面白い。自分の見た目がやや武将っぽいので、それも活かされるのではないか。 【発言者】山田
・①や③を選べない理由があり、消極的に選択した。 【発言者】浅越
・空間の絵が全く思いつかない。 【発言者】辻本(空間設計)
・映画の『清洲会議』(三谷幸喜監督)と似た印象だと思われると良くない。 【発言者】前田
・信玄の話に③であげられたパズル的要素を組み込む事は可能ではないか。 【発言者】榎並
・湿っぽいことをやりたくないのに、「信玄が死んだ」というトピックがあると、どうしても諸行無常の雰囲気が漂っていくのではないか。 【発言者】浅越

③『パズルとか伏線とか(仮)』に関しての指摘
・もし何か方法が思いついたら、応用が効くものになるのではないか。 【発言者】沈
・冨坂さんの説明の熱量が一番高い。今回の企画自体が綱渡りならば、公演自体も綱渡りにするべきではないか。 【発言者】鹿島
・あまりにも見えない部分が多くて、肯定する材料がない。 【発言者】浅越・熊谷
・ストーリーは後で考えるという点が「ない」と思う。 【発言者】津和野
・スタッフや劇団以外の立場としては、こういったコンセプトはアガリスク的であり、いよいよ答えを出す時なのではないか。 【発言者】伊藤・辻本(空間設計)

という指摘がありました。
これらの意見を経て、新たに多数決(複数票可)をとったところ、

「第1回 スタッフ・キャストによる投票結果」
①『友達が死んだ(仮)』…3票
②『信玄が死んだ(仮)』…8票
③『パズルとか伏線とか(仮)』…8票

となりました。ここで、共謀者の皆様の票(1人1票)もとることになり、その結果、
「第1回 共謀者による投票結果」
①『友達が死んだ(仮)』…1票
②『信玄が死んだ(仮)』…2票
③『パズルとか伏線とか(仮)』…9票


となりました。
共謀者の皆様による票が③に集中した事に、キャスト・スタッフ一同がやや驚きながら、(「アガリスクってこう思われているのかな」とふと漏らした沈さんの言葉が印象的でした)ここで会議の第一部は終了となりました。


次回は第1回会議の後半、キャスト・スタッフ・共謀者入り乱れての質疑応答の様子をお伝えします。

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